パッシブデザインの住宅における土間の特徴とは?

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高い断熱性と気密性は、室内の温度が外気の影響を受けにくくなるため冷暖房の使用量を抑えられたり、稼働効率を高められます。
日射熱を利用するパッシブデザインにおいても断熱性と気密性は欠かせない要素ですが、取り入れた自然エネルギーをより有効に活用するためには、蓄熱性も重要なのです。
そこで、今回はパッシブデザインにおける蓄熱性について、土間空間に注目して解説します。

□パッシブデザインとは?

パッシブデザインとは、自然エネルギーを活用して1年中快適な空間を目指す設計デザインのことです。
パッシブが「受動的」という意味を持つことから、住宅設計によって取り入れた自然エネルギーを調整しながら活用します。
「能動的」という意味のアクティブデザインとは異なり、太陽光システムやエコキュートなど設備による省エネではありません。

パッシブデザインは5つの要素から成立していますが、その中でも断熱性・気密性が重視されます。
他の要素である日射熱利用暖房や自然風利用だけでも、暖房や換気に使うエネルギー量を抑えられますが、その快適な空間を保つには高気密・高断熱であることが重要です。
また、高気密・高断熱であることに加えて、昼に集めた日射熱を夜まで維持できるように、蓄熱性も求められます。

□パッシブデザイン的な土間の特徴

断熱性や気密性は、断熱シートを敷いたり高性能の窓やサッシを採用したりするなど、設計時に対応することで住宅全体の性能を高められます。
では、蓄熱性は何に注目して設計すべきなのでしょうか。

実は、家の間取りの中で蓄熱の役割を果たすのが、土間なのです。

土間は、窓から取り込んだ日射熱を蓄熱し、その熱で冬の夜でも室内を暖かくできます。
反対に、夏は日差しを遮るだけでひんやりとした空間になり、夏でも涼しく過ごせます。

土間を採用する家は昔よりも少なくなっていましたが、パッシブデザインによって土間の蓄熱効果が発揮されるようになり、土間の価値が変化してきています。
現代の暮らしにも合う土間空間は、「夏は涼しく、冬は暖かい空間を実現する」というパッシブデザインの目的を満たす場所なのです。

パッシブデザインをお考えの方は、ぜひ土間空間も検討してみてください。

□まとめ

自然エネルギーを活用して1年中快適な空間を目指すパッシブデザインでは、断熱性、気密性、そして蓄熱性を重視することで、夏は涼しく、冬は暖かい空間を実現できます。
そして、その快適な空間を実現するための蓄熱効果を発揮するのが、土間空間です。
省エネ住宅で暮らしたい方は、ぜひ土間を取り入れたパッシブデザインの住宅を検討してみてください。

パッシブデザインの日射熱利用暖房はどんな仕組み?

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パッシブデザインは、自然エネルギーを活用して1年中快適な空間を実現するという1つの目的のもとで設計されますが、実は5つの要素を軸に考えられています。
5つの要素の特徴やポイントを意識することで、より効果的に省エネや快適さを追求可能です。
そこで今回は、5つの要素の1つである日射熱利用暖房について解説します。

□パッシブデザインの5つの要素

パッシブデザインは5つの要素から成り立ち、それぞれが影響し合うことでパッシブデザインは実現されます。

1.断熱性・気密性
日射熱利用暖房や日射遮蔽によって実現された快適な室温を維持する役割があります。

2.日射遮蔽
日射遮蔽によって夏の暑い日差しを室内に入れないようにすることで、夏でも涼しい空間を実現できます。

3.自然風利用
自然風利用で家全体の空気循環を良くすることで、部屋ごとの温度差が解消され、冷暖房の稼働効率が向上したり、ヒートショックの危険性が下がったりするメリットがあります。

4.昼光利用
太陽光が部屋の奥まで届くような設計をすることで、照明なしでも明るさを確保できます。

5.日射熱利用暖房
日射熱利用暖房は、窓から室内に日射熱を取り込み、暖房として利用する方法です。
この方法のおかげで、暖房の使用量を抑えながらも暖かい空間を実現できます。

□日射熱利用暖房はどんな仕組み?

日射熱利用暖房は、簡単に言うと窓から取り入れた日射熱で部屋の空気を温めるという方法です。
日射熱を暖房として利用するには、3種類の熱の使い方が必要です。

*集熱

まずは部屋に日射熱を集めることから始まります。
効果的に集熱するためには、南側の窓を大きくとったり、窓をできるだけ真南に向くように配置したりするなど設計上での工夫が必要です。

*断熱

集めた熱を逃がさないために、断熱性も重視します。
窓は家の中でも断熱性が低いですが、断熱性が高すぎる窓を採用すると今度は集熱性が低くなる恐れがあるので、集熱と断熱のバランスをとる必要があります。

*蓄熱

集めた熱を寒い夜まで持ち越すためには、蓄熱も大事です。
木造よりもコンクリート造のほうが蓄熱性が高いですが、窓の断熱性と同様に集熱性とのバランスをとる必要があります。

□まとめ

パッシブデザインは、断熱性・気密性、日射遮蔽、自然風利用、昼光利用、日射熱利用暖房という5つの要素を軸に成り立っています。
5つの要素がそれぞれ独立しているのではなく影響し合っており、日射熱利用が役割を果たすには断熱性は欠かせないのです。
より快適で省エネな家を実現するためにも、パッシブデザインの要素の特徴を理解した上で設計を進めていきましょう。

パッシブデザインでは換気が重要!第一種換気をおすすめする理由について

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パッシブデザインは、断熱性・気密性、昼光利用、日射熱利用暖房、自然風利用、日射遮蔽という5つの要素を軸に設計されています。
その中でも今回注目するのが、断熱性・気密性による健康リスクです。
パッシブデザインで24時間換気システムが義務付けられている理由とともに、第一種換気をおすすめする理由を解説します。

□パッシブデザインでは換気が重要!

自然風利用ができるように設計するパッシブデザインだからこそ、換気を意識した設計ができますが、多くの人は住宅の設計時から換気性能を重視しません。

しかし、パッシブデザインではなくても、全ての住宅において換気は重要です。
呼吸や調理などによる水蒸気や二酸化炭素によって室内の空気は徐々に汚れていき、また家具から発生する揮発性有機化合物も蓄積していきます。
これらの汚れた空気がどんどん部屋に溜まっていくと、健康に被害を及ぼす危険性、さらには住宅そのものに悪影響を与える危険性があるのです。

特に、パッシブデザインでは高気密・高断熱が求められているため、化学物質による空気汚染やカビやダニの繁殖の可能性が高まり、シックハウス症候群を発症してしまうケースも考えられます。

このような健康被害からご家族を守るためにも、換気性能を重視して家づくりを進めていきましょう。

□パッシブデザインには第一種換気がおすすめ!

そもそも全ての住宅に換気装置はついており、パッシブデザインに関しては24時間換気システムの設置が義務付けられています。
換気方式は、吸気と排気の関係によって3種類に分かれます。

第一種換気は、給気・排気ともに機械を使用するので確実に部屋全体を換気できます。
第二種換気は、給気にのみ機械を使用し、排気は機械を使用せずに排気口から自然に排気します。
第三種換気は、第二種換気の反対で、自然に給気口から給気して機械で排気する方法です。

パッシブデザインには、強制的に給排気する第一種換気をおすすめします。
高断熱・高気密であるパッシブデザインの家では確実に換気をしなければ、健康リスクが高まってしまうからです。
また、強制的に換気することで、家全体の温度と湿度が一定になり、エアコンの稼働効率が上がるというメリットもあります。
給気・排気ともに機械を設置する必要があるため初期費用はかかりますが、長期的に考えると光熱費を抑えられるのです。

□まとめ

家の中が換気されないと、汚れた空気や化学物質が溜まってしまい、健康や住宅そのものに被害を与える危険性があります。
特に、パッシブデザインは断熱性と気密性が高いため、そのリスクがさらに高まってしまいます。
パッシブデザインの家には確実に換気できる第一種換気を取り入れて、健康に、そして快適に暮らしましょう。

パッシブデザインでの屋根の重要性とは?設計のポイントとともに解説します!

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最近、エネルギー価格の高騰で省エネを意識する機会も増えてきたのではないでしょうか。
日頃のこまめな節電も大事ですが、これから家を建てる予定がある方には、生活の中で意識しなくても省エネになる家づくりをおすすめします。
今回は、省エネの家の代表例であるパッシブデザインについて、屋根の重要性とともに解説します。

□パッシブデザインの5つの要素

省エネに特化した住宅に見られるパッシブデザイン。
5つの要素で成り立っており、どれか1つに特化するのではなくバランス良く設計することが大切です。

1.断熱性・気密性

断熱性によって室内の温度を一定に保ち、気密性によって外気の流れを遮熱することで、自然エネルギーを効率的に活用できます。

2.日射遮蔽

夏の涼しさを確保するためには日射遮蔽が重要です。
庇(ひさし)によって窓から入る太陽光の量を調整したり、木を植えて外壁に当たる太陽光の量を調整したりする方法があります。

3.自然風利用

自然風利用は風通しを良くするためだけではなく、排熱効果もあります。
家全体に風の通り道ができるように、窓や扉の位置を工夫することが大切です。

4.昼光利用

昼間に太陽光を部屋に取り入れることで、照明の代わりになります。
太陽光を取り入れるだけではなく、部屋の奥まで導くことも設計におけるポイントです。

5.日射熱利用暖房

夏場では暑さの原因になる太陽熱も、冬場では寒さを解消してくれます。
高い断熱性能とともに、暖房器具に頼らずに暖かさを維持できます。

□パッシブデザインにおける屋根の重要性

壁や天井であれば断熱性・気密性、窓であれば日射遮蔽や昼光利用など、家のそれぞれでパッシブデザインの複数の要素を担っています。
その中でも屋根はさまざまな要素と関わっており、パッシブデザインの家を実現するうえで非常に重要な部分です。

*家全体の断熱性能を決める

断熱性能を表すUA値は、屋根、壁、基礎、窓の合計の平均値で計算されます。
UA値が低いほど断熱性能が高いとされており、屋根の断熱性能が家全体の断熱性能に影響するのです。

*熱を逃す

屋根の形状はデザイン性を重視したい部分ですが、一方で家全体の風通し、特に排熱効果に関わってきます。
おすすめの形状は片流れ屋根や切妻屋根で、屋根に高低差があることで上に昇った熱が煙突効果で逃げやすくなります。

*自然風を取り込む

上に昇った熱を逃がすことで、上昇気流の原理で家全体の空気が動き、自然風をより取り込みやすくなります。
屋根に高低差を付けることに加え、天窓を付けるとより効果的です。

□まとめ

パッシブデザインの5つの要素はバランスが重要です。
また、一箇所の間取りが家全体の機能性に影響するので、家全体の風通しや採光、導光を意識して間取りを決める必要があります。
屋根は、特に断熱性と自然風利用と強く関わっています。
屋根の形状を決めるときは、デザインとともに機能性も重視して決めてみてください。